cartaphilium

La prière la plus solitaire est ainsi la plus solidaire des autres.

点、線、死線、マシンガン――北野武『ソナチネ』について

※映画の視聴を前提に書かれています。 緊張と弛緩、不発、遊戯としての発砲。『ソナチネ』において多く挟まれる「点としての死」のモチーフは、少しずつ毒が回っていき体が思うように動かなくなるような、そうした緩やかに死へと向かっていくことを予期させ…

文体の舵をとれ 〈練習問題⑦〉視点(POV)(ノクチル)問二・問三

四〇〇〜七〇〇文字の短い語りになりそうな状況を思い描くこと。なんでも好きなものでいいが、〈複数の人間が何かをしている〉ことが必要だ(複数というのは三人以上であり、四人以上だと便利である)。出来事は必ずしも大事でなくてよい(別にそうしてもか…

文体の舵をとれ 〈練習問題⑦〉視点(POV)(ノクチル)問一

四〇〇〜七〇〇文字の短い語りになりそうな状況を思い描くこと。なんでも好きなものでいいが、〈複数の人間が何かをしている〉ことが必要だ(複数というのは三人以上であり、四人以上だと便利である)。出来事は必ずしも大事でなくてよい(別にそうしてもか…

文体の舵をとれ 〈練習問題⑥〉老女

今回は全体で一ページほどの長さにすること。短めにして、やりすぎないように。というのも、同じ物語を二回書いてもらう予定だからだ。テーマはこちら。ひとりの老女がせわしなく何かをしている──食器洗い、庭仕事・畑仕事、数学の博士論文の校正など、何で…

文体の舵をとれ 〈練習問題⑤〉簡潔性

一段落から一ページ(四〇〇~七〇〇文字)で、形容詞も副詞も使わずに何かを描写する語りの文章を書くこと。会話はなし。 早朝、師走の海沿いを進む列車は、すべてが今日になり損ねて昨日のままのような、ある種の静謐さを湛えていた。とっておきの秘密を共…

自選短歌(2)

海だから 二十五センチメートルのこの水槽を母としようか テレビからマジカルビーム世界が破滅したあとの景色をお送りします もういくつ寝るとお正月 廃墟みたいな実家の窓辺 まあそんな感じで日は暮れていきます忘れた頃の痛みみたいに 泳ぐのは春の驟雨の…

[全訳]デリダ「人間科学の言説における構造、記号、遊び」 ディスカッション

凡例 一、原文でイタリックで強調されている語には傍点を付した。 一、原語を示す場合には、()で括った。 一、原文に[]で補足されている内容については〔〕で訳出した。ただし、補足内容がたんにフランス語訳である場合には、そのまま()で括った。 一、…

樋口円香の単色アイコンについて

時がすぎるのはあまりに早い。 同じ昨日を繰り返しているようで、また訪れる今日はすこしづつその軌道を変えて、私たちはいつの間にか遠くどこか離れた場所にいるものです。 半年前に私たちが何について話していたか、覚えていますか? そう、樋口円香さんの…

文体の舵をとれ 練習問題 第一章~第四章

私が主催して七月から牛歩の歩みで進んでいる文舵合評会で提出した文章のまとめです。 下の方に各文章についてのメモがあります。 第一章 自分の文のひびき 〈練習問題①〉文はうきうきと 問一 声に出して読むための語りの文を書いてみよう。 その際、オノマ…

セルトー『日常的実践のポイエティーク』の注釈と研究

この文章について 本稿はわたしの学位論文「抵抗する「使用」——セルトーの〈散種〉 ミシェル・ド・セルトー『日常生活の創発性』をめぐって」の第一部(と第二部冒頭)の部分掲載です。全文はBOOTHにあります。 第一部は「はじめに」とあわせて1.8万字くらい…

カレン・メルヴェイユの百合論①

この文章について Le manga au fémininという本(http://www.editions-h.fr/M10kimages3.html)に掲載されている « La révolte du lys : une odyssée du yuri »という文章の翻訳その1です。 百合をその歴史から体系だって説明したジャンル論になっており、筆…

そこには

社会があるのだろうか。物語があるのだろうか。 ひとが何某かのストーリーに基づいてしかあらゆるものを認識できず、したがってすべての問題は物語とその信仰へと帰されるのであれば。すべては物語だ、ということになる。 たとえば、私たちはなんだかよくわ…

自選短歌(1)

私の作った短歌で特に気に入っているやつを選んでみた。だいたい2019年くらいから最近までのもので、Twitterに投稿するのもなんか気恥ずかしいからとiPhoneのメモアプリでしばらく眠っていたものも多い。というかほとんどである。各句の並びは適当なので、年…

おいしいカルボナーラの作り方

突然だが、「おいしいカルボナーラ」を想像してみてほしい。おそらく以下のような条件が当てはまっているはずだ。 ・湯気が立っている ・パスタである ・それにはおおよそ卵・生クリーム・チーズなどからなるソースで味付けがされていて、ベーコンや、もしか…

『サマーフィルムにのって』はフィクションである。当然ながら。

映画『サマーフィルムにのって』を初めて見た人は、何よりもその作中において特権的に見過ごされたパラドックスによって混乱することになるだろう。しかしそのパラドックスは、「これはフィクションである」ということを明示することによって(都合よくも)…